5年ほど前。
KENNETH FIELDについて、「分かりやすいブランドか、分かりにくいブランドか。」
そんな記事を書いたことがあります。

当時も今も、その答えは変わりません。
僕にとってKENNETH FIELDは、やっぱり、分かりにくいブランドです。
でも不思議なことに、ずっと惹かれ続けています。
好きで洋服屋を続けているなかで、「沼だな。」と思う瞬間がいくつかあります。
その一つは、好きなジャンルのモノ。
似たようなものを買えば買うほど、少しの違いが気になって、また欲しくなってしまいます。
好きなものとは、自分が着てしっくりくるモノが大半です。
そういった出会いには、自然と心とお財布の紐が動かされてしまいます。
“自分らしいもの”、やっぱり身につけたいですからね。
そして、この記事をご覧の皆さんなら、
一度は経験したことがあるであろう”沼の入り口”がもう一つ。それは、似合うか分からないけど、
着てみたい(着こなしてみたい)と刺激されるモノに出会ってしまったときです。
似合うと思ったものだけを買い続ければいいものの、
その枠を飛び出したくなったとき。
「沼だな。」と思うのです。
僕にとってKENNETH FIELDというブランドは、
まさにそんな衝動を駆り立ててくれる存在なのです。

2012年に始動したKENNETH FIELD。
コンセプトは「For NEW TRADITIONALIST」。
「伝統を重んじながらも、時代にとらわれないミックス感覚や遊び心を忘れない人々へ」というテーマをもとに、アメリカントラディショナルを多角的にアップデートしたアイテムを提案しています。
デザイナーは草野健一氏。
自身が体験した80年代以降のアメリカントラディショナルクロージングを中心に、1990年代初頭から現代までの様々な国や地域のカルチャーに着目しながらデザインを行っています。
スポーツコート、シャンブレーシャツ、グルカトラウザー、ネクタイ。
ブランドを象徴するアイテムは数多くありますが、
不思議と「KENNETH FIELDといえばこれ」と一つに絞ることができません。
トラッドなのか。
ワークなのか。
ミリタリーなのか。
アウトドアなのか。
KENNETH FIELDの服が一番似合うのは、草野さん。
ご自身の経験やフィルター、哲学をもとに、
本当に着たいと思うモノづくりをしているのですから当然といえば当然なのですが..。
ただ、異なるルーツのカテゴリーを掛け合わせるのではなく、
シガーポケットやフィッシングのディティールなどは草野さん自身のライフスタイルを反映させたもの。



さまざまな国の歴史や文化といった大きなスケールと、もっと身近な個人の暮らし。
それこそが、KENNETH FIELDにしかない魅力なのだと思っています。
そうして生まれたプロダクトからは
「あなたにはどう見えますか?」
「あなたならどう着ますか?」
そんな問いを投げかけられているように感じるのです。
自分の解釈が間違っていないか。
勝手にそう思っているだけじゃないか。
そんな風に感じることもあります。
でも、そんなことよりも挑戦してみたくなるのです。
数年前、草野さんに勧められるがままにスーツをオーダーしたことがあります。

正直なところ、なぜその生地で、そのモデルなのか完全には理解できていませんでした。
でも、それで良かったんだと思います。

着ながら考える。
どうしてこれなのか。自分ならどう着るのか。
そして、振り返ってる今もまた。
その意味を探りながら、自身の感覚の変化や、その後の反省などが浮かんできます。

KENNETH FIELDの服と向き合っていると、自然と服について考える時間が増えていくのです。
そして、気づけば、服がもっと楽しくなっている自分がいます。
考えることも、悩むことも含めて、
その度に癖になり、「あぁ、沼だな。」
と、思うのです。
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